杉原淳一・染原睦美『誰がアパレルを殺すのか』日経BP社、2017年。

 杉原淳一・染原睦美『誰がアパレルを殺すのか』日経BP社、2017年。一気に読んだ。百貨店における売上げの低迷、長時間労働による店舗スタッフの労働力不足などの問題を手がかりに、アパレル業界の問題点を分析している。中国生産に過剰に依存してきたことへの問題点を指摘しながら、ユニクロ型SPAに変わるインターネット販売の台頭に注目している。その上で、オンラインSPAの代表としてゾゾタウンなどを紹介し、国内産地再生の可能性についても言及している。2017年に入ってから、繊研新聞など業界新聞では、トレーサビリティ(履歴管理)、エシカル消費、下請加工のサプライヤーリスト公開などをキータームとして用いている。その方向性に乗っかりつつも、公正で透明性のあるものづくりのあり方に展望を見出している点が、本書の最大の特徴であるといえる。業界の動向を把握する上では、必須のテキストといえるような内容。この間の新聞報道の状況も整理できるという点で、有益なガイドブック。これを踏まえて各産地の動向をフォローできれば、視点に立体性が出てくるように思われる。

誰がアパレルを殺すのか

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