春休み中に読んだ『ケアの倫理』

 春休み中に読んだ『ケアの倫理』、とても難しい本だったが、面白かった。理解できているとは言えないが、他人に支えられること/支えること、それらを所与としてを無視してきた様々な社会科学に対する問題提起としてケアという概念を丁寧に扱っていた。ケアを認識することが大事である、ケアの視点を欠かさない。家族関係では不可欠のことなので、実感としてわかる。

 今の実生活では、他人のことを考えずに過ごすことはできない。仕事をしている時間、あるいはこれを書いている瞬間は他人を気にしないですむ。ただ決められた時間の範囲内である。その意味で、ケアを気にせず、思う存分、自分のやりたいことをやっている同業の人たちに対するうらやましさを感じる。

 自分ではない他人と一緒に生活し、かつ他人だからと言って放っておくことができない。ただい、自分とは違う他人なので、自分の思い通りにはなるはずもない。毎日毎日この問題に向き合って、答えも出ず、どうなるのかもわからない。もちろん、問題を正面から受け止めず、逃げる方法もかなりある。

 当事者のみ、あるいは自分だけですべてを決められる。もちろん、いろいろな制約があったうえでだけれど、自分がやろうと思えば決断できる。そのような状況がいまのリアル世界にはほとんどない。そんなことを考えながら、『ケアの倫理』を読んだ。