『就職とは何か』、学生との議論
基礎演習の合宿の素材として検討しました。
- 作者: 森岡孝二
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/11/19
- メディア: 新書
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全体として筆者のこれまでの研究蓄積を用いて、現在の若年層の就活事情に焦点をあてた好著と言えます。学生があげた論点の中では、(1)就活を遅らすことが学力低下の克服につながるのか、(2)就活や就職後に使える教育とは何か(3)社会人基礎力で若年雇用問題は解決するのかなどが議論されました。学生があげたのは、労働供給側である学生や若年層がいかに就活で生き抜くのかという論点が多く、それ自体学生が将来設計を心配している事実を表すものとして理解できます。しかし、本来森岡氏が強調するように、会社に適応する論理だけでは若年雇用問題が解決しえないことは、ブラック企業問題の台頭を見ても明らかです。したがって、労働需要側である会社側がグローバル化時代にいかに安定的な雇用を生み出すのか、その条件を探ることこそもっとも大事なテーマのひとつといえます。またワークシェアリングについても実現可能性について疑問の声があがることがありましたが、個別の会社で正社員雇用を徹底しているところやワークシェアリングを行なっているところもあるはずです。また諸外国ではこうした仕事の分かち合いも実際に実現されていることもあることは周知の事実です。
今回の議論を通じて、学生が徹頭徹尾「労働供給側」の立場からのみ思考をめぐらせているということをあらためて痛感いたしました。逆に言えば、個人の体験、身近な問題を社会の問題として考えさせるための仕掛けや議論も必要なのではないかと思います。