桐生地場産業調査

6月後半から3回ほど、桐生地域の地場産業調査に行きました。予備調査として、4月に群馬県の経済研究所に訪問し、概要を伺いました。続いて、6月後半に桐生を訪問し、地場産業振興センターや織物会館などで歴史的な概要をうかがいました。その際、地元の繊維業界の全体像を分かる方にお話をお聞きし、そこでの紹介を受け、7月後半と8月上旬に数社繊維関係中小企業を訪問しました。


1300年の歴史を持つ桐生織物。古くは新田義貞の古旗に桐生織物が使われたといわれています。

桐生織物会館では、和装・洋装とも製品化されたものを購入できます。海外向け販路も模索中。

産地の分業構造としては、商業資本である買継商とものづくり部隊である機屋さんが主軸となっています。そして、機屋さんにも元機と呼ばれる親機協力工場と呼ばれる賃機の2種類があります。桐生繊維産業の発展が日本経済を牽引したことから、親機ー賃機に関する構造分析は、日本経済史の分厚い研究蓄積があり、多くの研究成果が発表されています。

桐生織物の生産・分業構造

出所:川村晃正(2006)「明治初年桐生織物産地における産業集積と分業関係」『専修商学論集』82、238ページ。

最近では買い継ぎ業の役割は低下し、アパレルと直接取引をする織布業者も増えています。繊維産業全体としても既製品が出回り、アパレルの役割が大きくなる中で、商業資本の地位が低下してきたことはよく知られていることです。親機ー賃機の構造は、量産化時代の作れば売れる時代の産物でもあるとは思います。これはリスクを軽減し、自社工場で織れない製品があった場合に、関連の家内工業の労働者に仕事を紹介する。こんな慣行の現われだと思われます。

全体的な傾向として、産地内に完成製品を作るメーカーが不在な点がこの産地の課題ではないかと推測しています。他方、ヒアリングをした複数の中小企業の中には、自社で開発した独自の技術・技能を製品化し、ものづくりとしての基盤を強化している企業もいます。また染色整理業から脱し、化粧品や石鹸の生産など新たな事業に飛び出す企業も確認できました。今後は織機などの特有の技能・技術を再調査し、家庭内職労働者の方にもインタビューをしてみたいと考えています。

のこぎり屋根の織物工場。現在でも和装織物で稼働中。見学もできます。

伝統のジャガード織機。