菅野完『日本会議の研究』扶桑社新書、2016年。

 話題の新書『日本会議の研究』扶桑社新書を読んだ。安倍政権が人脈的に日本会議とつながりがあるという点のみならず、数人のリーダー層をさぐりあて、彼らの原点が長崎大学の学園正常化闘争にあること、新興宗教生長の家」の幹部であったことなどを明らかにしている。この間の右派の憲法改正運動は突如として出てきたものではなく、学生運動が後退していく1970年代以降着々と積み上げた、右派の運動の成果だというのがこの本の主張である。日本会議の実務能力は非常に高く、集会や選挙での動員力もすごい。自民党の政治家はそこに期待をしている。
 かつて日本会議で活動し、現在は距離をおく保守派の論客は、自分は保守だがきちんと勉強をしたかった、テキストを読んだりしたかったが、勉強会では数人に「先生」の教義を教わるだけだった。知性がない。だからやめたと言っている。5月3日の憲法集会の模様を報じたクローズアップ現代でも、護憲派生活保護障がい者など生活実態から憲法を論じているのに対し、改正派は生活感が皆無。国家論が前面に出ている。そもそもなぜ改正しようとするのかも不明確な印象を持った。今回『日本会議の研究』を読んでもその点を強く感じる。なお、『日本会議の研究』でいまの幹部の出自は生長の家にあるとされているが、他方で現在の成長の家はエコロジー左翼ともよべる方針転換をはかっており、日本会議とのつながりはまったくないと説明がある。

日本会議の研究 (扶桑社新書)

日本会議の研究 (扶桑社新書)

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【1】「日本会議は中身空っぽ 異色の著述家・菅野完氏が解明」『日刊ゲンダイDIGITAL』2016年6月6日(http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/182670

【2】魚住昭「安倍政権の黒幕!?右派団体「日本会議」とは何か」『現代ビジネス』2016年6月5日(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48784