日本国憲法をめぐる現状と対立軸

 自民党日本会議憲法改正論議は、国家に服従する国民の姿を望ましいものとして描いている。天皇が中心とする明治憲法のあり方を理想とし、人権とは国家が認める範囲内で存在するものに過ぎない。また、国民の規律を形成するのが憲法であるという考え方に基づき、家族の重要性などを明文化する。他方で、戦後70年間続いた日本国憲法の平和主義のあり方は、国民に一定程度根付いている。2015年の安保法制では、団塊世代と若い世代が立憲主義という点で共闘した。国民が権力者を縛るものが憲法であるという枠組みで、従来の改憲論者も含めた広範な支持者が集まった。
 NHKスペシャルの映像では、自民党総裁つとめた河野洋平ハト派の政治家として、平和主義に基づく日本政治の重要性を説いている。また、本来ごりごりの改憲論者である中曽根でさえも、憲法の平和主義や国民主権に即した政治運営を行うことを明言している。これら自民党の政治家を縛ったのは、日本国憲法そのものであり、それを生活に活かそうとする国民運動による。
 2000年代以降の日本会議の台頭や改憲論議は、平和主義、国民主権を柱とする日本国憲法を、危機的な状況に追いやっている。他方で、森友学園問題でクローズアップされたような明治憲法的な価値観への国民の拒否感もまた、根深い。憲法を現実生活に活かしていく運動をどう拡げるか、踏ん張りどころといえる。