金子雅臣『壊れる男たち』岩波新書、2006年

 金子雅臣『壊れる男たち』岩波新書、2006年。女性相談室に訪れたセクシャルハラスメントの案件を具体的に紹介し、被害者と加害者の事実認識の見事なまでの隔たりを指摘する。複数の事例で加害者の男性が、職場における優越的な立場をわきまえず、対等な恋愛関係と理解している。このことを、本書では、男性優位の現実をみず、勝手気ままに解釈する、自己中心的幻想である、と指摘する。

 本書によれば、都合のよい解釈、他者への理解の欠如、これがセクシャルハラスメントを生む根本原因である。男性は下駄をはかせてもらっている。そういった認識が希薄である。家庭での夫婦生活における性生活と、外での性願望が分離している。男性が男性優位社会に無自覚であればこそ、ハラスメントは生ずる。このような主張を展開している。

 結論的な主張に至る前の、豊富な事例が読みどころ。具体的事例は、どのような対称性が生まれているのか理解するうえで、必須である。本書は2018年に5刷。しばらく買うことができなかった。筆者は男性。それだけに、加害者になる男性と、そうはならない男性に注意を向けている。

 

壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)

壊れる男たち―セクハラはなぜ繰り返されるのか (岩波新書)