プラド夏樹『フランス人の性』光文社新書、2018年

 プラド夏樹『フランス人の性』光文社新書、2018年。フランス在住のジャーナリストがフランスの性教育カップルや性的関係などについて、実体験をもとに文章化したもの。フランスのカップル概念には、結婚という制度に挟まれた「繁殖のための同居」を否定するフランス的な価値観がある。子供ができて、パパ、ママになっても二人だけの時間はつくる。恋愛関係の緊張関係がなければ、別れることも厭わない。

 男性優位の社会であることは、フランスも日本と同じである。とはいえ、本書によれば、男性が女性を誘うことはフランスで積極的に推奨される。それは、米国発の「MeToo」運動に、一定の反発があったことからも示されている。男女間を中心とする性的関係は相手を思いやること、同意のない性的関係は認められないこと。これらを前提とする。しかしながら、あとは、当事者で解決すべき、というのがフランス的な価値観だという。

 本書で紹介されるフランス的価値観がどれだけ普遍的なものなのかは分からない。筆者自身も経験したオープンすぎるフランスの性教育も、驚きの連続だ。ただし、日本的なクローズドな価値観を、相対化するのには、有意義な本だと思う。

 

フランス人の性 なぜ「#MeToo」への反対が起きたのか (光文社新書)

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