鶴原吉郎『EVと自動運転』岩波新書、2018年。

 鶴原吉郎『EVと自動運転』岩波新書、2018年。本書は電気自動車や自動運転の動向を自動車産業におけるサービス化ととらえる。ハイブリットエンジン後発国の中国は電気自動車にターゲットを絞る。環境規制が厳しいEUを背景にフォルクスワーゲンは、中国市場に参入する。無人運転が可能になれば、輸送コストが減り、広告とセットされたタクシーの無料化も可能になる。自動車を所有するという考え方が後退すれば、自動車のサービス化も加速する。これは所有する喜びとしての、自動車製品の価値観の転換を意味する。

 本書では電気自動車の台頭が、電気産業における後発企業の進出に例えられている。かつてのブラウン管テレビは日本企業に強みがあった。台湾企業は液晶テレビの研究開発を行う。当初は技術格差があったが、やがて、多数企業の参入で品質が安定する。価格も下がる。中国の電気自動車の力の入れようは、日本の自動車産業の危機をももたらしうる。このようにEV車をある種のモジュール化のように把握している点が面白い。自動車産業の国際競争も立体的にわかる。優れた入門書だと感じた。

EVと自動運転――クルマをどう変えるか (岩波新書)

EVと自動運転――クルマをどう変えるか (岩波新書)