岡山出張

2泊3日で岡山県に調査に行ってきました。岡山県の倉敷に調査に入ったのは09年。法政大学大原社会問題研究所のプロジェクトがきっかけでした。大原社研の創始者である大原孫三郎氏は、倉敷市の有名な経営者。倉敷紡績を発展させるとともに、倉敷中央病院や大原美術館の設立にも関わり、事業とともに社会貢献活動も行ってきた社会的事業家の先駆的な方です。そういうつながりから当初は倉敷市の商店街の活性化事業、水島地区の自動車産業や公害患者のヒアリングなどを行ってきましたが、10年ころより児島地区の繊維産業に焦点をあてて調査研究するようになりました。幸い、本年度より科研費補助金をいただき、人材育成や技能形成の現状と課題を明らかにすべく、行政、民間企業、学校にヒアリングを行っています。

写真は調査先の縫製工場がある場所の風景。

今回の調査では地元企業の中でも、アパレル商品の縫製や企画を手掛ける企業、畳縁の生産を重点に置く企業、など多様な中小企業経営者のお話を聞くことができました。アパレル製品は90年代以降、中国からの安価な輸入品の増加で大打撃を受けてきましたが、その中国でも人件費の高騰、労働問題の深刻化、新たな富裕層の増大などがおこり、再び日本国内の産地への注目が集まっているというのです。児島では学生服やジーンズという伝統的に強い産業をベースにして、個々の中小企業が畳縁などニッチな市場を開拓し、地元の取引関係をうまく利用しながら、「競争」と「共存」が成り立っています。アパレル関係を目指し、自社ブランドを立ち上げようと考えている若年層にとっても、児島は「技術」を身に着ける場所として一定の魅力を持っています。さて、この調査研究をいかにしてまとめていくのかは、長期的に考えていかなければなりません。1つは、「縫製」が中国に負けている、若年層は「縫製」を嫌っているという固定観念を改めること、今1つは、個別企業としての技術力と産地としての技術力を区別すること、これらが論点かもしれません。