中島弘象『フィリピンパブ嬢の社会学』新潮社、2017年。

 中島弘象『フィリピンパブ嬢の社会学』新潮社、2017年。フィリピンパブを研究することになった大学院生の実態レポート。偽装結婚による滞在、ピンはねしてもうけるブローカーの存在、フィリピンの経済時事的などが、生き生きと語られている。本書の最大の売りは、筆者自身の恋愛経験であろう。母国に送金するためにコツコツ働くフィリピンパブの女性。筆者はその女性のひとりと恋に落ちる。指導教官や両親に反対され、自身も「騙されているのではないか」と懐疑心を抱きながらも、デートを重ねる。就労時間の合間に密会をし、ブローカーにみつかるという危険を経験しながらも、結婚にいたる。こうした経緯が具体的に語られる。
 フィリピンと日本の圧倒的な経済格差もフィリピン人女性が来日する動機のひとつである。本書では「フィリピンにいたら何もかもできない。仕事ない、仕事があっても給料安い。6万円なんて大金だよ。フィリピンじゃ稼げないよ」(55ページ)との発言も紹介されている。フィリピンが出稼ぎ労働者による海外資金の流入によって支えられているという点も考えさせられる。ルポなので読みやすい。その後の学習の広げ方としても、女性労働、外国人労働、国際関係論など、発展性がみこめる。オススメの本。

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)