読書:『地方消滅』

読了。以前購入し、気になっていたが読む時間が取れなかった。とある論文を読んでいて、その内容の批判的検討がなされていたので、読んだ。全体として、ショッキングな内容を含んでおり、思わず巻末にある関連する市町村の人口減少率を見てしまう。この本では、20〜39歳の若年女性の減少率が、2010年と2040年を比較して、50%を超える自治体を「消滅可能性都市」と定義している。そのうち、2040年時点で人口1万人未満の自治体は「消滅可能性が高い」とされている。

問題は、なぜ東京に人口が流出するのか、全国的にはきわめて出生率の低い東京の生活をどうとらえたらいいのか、なぜ子供を産み、育てることが積極的になれないのか。こうしたことを多方面から検討することだろう。労働時間や社会保障政策とのかかわりもある。長時間労働は、子育てとは両立しづらいし、地域に持続可能な雇用がない場合には、他の自治体への流出も生まれる。グローバル企業に依存することなく、地域の産業を育成する方法に注目したい。

本書では、地域の特色ある資源を活用するモデルが「産業開発型」とされている(第6章)。農業、中小製造業、観光などの取り組みが挙げられている。これはお金も地域に落ちるし、地域内再循環の可能性も開かれている。センセーショナルな数字が躍る本書は、その背景を冷静に分析することで、持続可能な日本経済を考えることにつながるだろう。