読書:『キャバ嬢の社会学』

キャバ嬢の社会学 (星海社新書)

キャバ嬢の社会学 (星海社新書)

著者のTwitterブログから知る。元京大院生が在学時に、参与観察としてキャバクラで働いたことを下に、社会学的考察がなされている。内容のポイントとしては、キャバ嬢はプロであることを客に認識させつつ、「素人」であることも理解させることが求められる。これはある意味矛盾である。そして、この矛盾こそキャバクラ嬢をして「病む」という言葉に代表される職場のストレスとなる原因という。

こうした性風俗産業の産業実態、労働問題はもっと解明されるべきだが、これを読んでいて思い出したのが、『高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか』の杉田真衣さんの論文(「若年女性と性的サービス労働」)。杉田さんの論文で対象とするのは、狭義のキャバクラに限定されておらず、広い意味での性風俗産業に従事する若年女性である。

高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか: 若者たちが今〈大人になる〉とは

高卒5年 どう生き、これからどう生きるのか: 若者たちが今〈大人になる〉とは

対象をこのように広げると、一時期NHKあさイチでもとり扱っていた若年女性が風俗産業で働かざるをえない構造という問題にもぶつかる(2013年12月11日放送、「女性の貧困〜追いつめられる母親たち〜」)。そうした女性の貧困問題との関係性までは本書では分析されていない。が、学生が例えばフィールドワークをするときの課題設定はどうするのか、それと実態との関係をどう文章化するのか、そこら辺を知るうえではありの本と思う。