増田寛也編著『東京消滅』中公新書、2015年。

 増田寛也編著『東京消滅』中公新書、2015年。高齢化社会の到来に対して介護施設が足りない。それに対し、本書は外国人技能実習生の活用、介護労働者の処遇改善に加え、高齢者の地方移住を説く。高齢者の移住を強制するのであれば、それはうばすて山ではないか、という批判に対して、本書では「元気な高齢者を想定している」と反論するが、介護施設に入居している高齢者の移動は現実的に可能なのか。人口集中という状況を改善する処方箋を模索しているが、全体としてパッチワークの感じが否めない。本書が指摘するまでもなく、地方経済や地域社会で、高齢化に対応する地域医療の構築は必要。ただし、それが移住を基軸にすると高齢者の生活を無視した強引さが伴う。地域医療を担う中核病院や高齢者施設で働く医療労働者の生活保証を可能にする中央からの財政支出が必要なのではないだろうか。