経済理論学会の労働過程論の論文(2017年1月号)

 経済理論学会の学会誌(2017年1月号)の労働過程論の論文を読んだ。ブレイヴァマンが強調した統制概念が、それ以前の資本主義の統制とは異なること、テイラー主義によって自律性が奪われたこと、それゆえ、フリードマンらが指摘する「責任ある自律性」戦略というのも、ブレイヴァマンの枠組みの深化であることを指摘している。労働過程論においてブレイヴァマンが批判されるとき、経営戦略の多様性が言われる。ただし、それ自体はブレイヴァマン自身もおり込み済みで、ヒューマンリレーションズや人間関係論などは経営側が労働過程を掌握した上での、現象的な権限付与にすぎないことを指摘してしている。ブレイヴァマンとフリードマンででは「自律性概念の次元が違う」というこの論文の結論自体は目新しいものではないが、その論理を丁寧に論証したこことに価値があるのかなと思う。他方で、その後の議論でも拡張するジェンダーや賃金格差の問題をどう組み込むのか、気になるところではある。