伊原亮司『私たちはどのように働かされるのか』こぶし書房。

私たちはどのように働かされるのか

私たちはどのように働かされるのか

  筆者にご献本いただく。ありがとうございます。『現代思想』などに掲載された論考をまとめたもの。非正規労働者が増える中でのトヨタシステムの競争力基盤の分析など、これまでの研究成果の延長線上にあるもののあるが、とりわけ興味深いのはキャリア形成論を扱った第6章。本田由紀が最近の能力主義をハイパーメリトクラシーであると批判し、概念の曖昧さを緩和するために、柔軟な専門性をもつべきと主張している点を、批判している。
 もちろん最大限評価したうえでの話なのであるが、結局のところ、仕事のスキルは学校レベルでは身につけるのが限界があって、雇用関係自体は社会関係が作るのだということを述べている。たとえば、次の指摘。「「能力」とは働く場において実体化されるものであるにもかかわらず、それを雇用前に保持させることの要求とその保持を証明することの要求が、それを真に受ける若者たちを困惑させている」。この記述を見たときに、「さすがに鋭いな〜」と思った次第でした。