4月の仕事

授業をおおむね3クール終えて、徐々に授業モードでの生活が始まっています。講義の2コマは、これまでやってきた授業内容をベースにしていますが、新しく再構成しているので時間をかけて準備しています。経営労務論では入職経路として、新しく就職活動や労働者の権利について扱いました。本田由紀が言うところの「適応力」と「抵抗力」のうち(筑摩書房のウェブでご本人の解説があります→こちら)、後者の抵抗力に該当するワークルールの基本原理を学ぶことはいまの大学生にとって重要な課題だと思うからです。

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)

教育の職業的意義―若者、学校、社会をつなぐ (ちくま新書)

過去の関連記事。http://d.hatena.ne.jp/nohalf/20100215
経営学史は企業経営を取り巻く環境の大枠として資本主義と競争というテーマで3回ほど講義をしています。Marxの資本主義分析のうち、剰余価値生産をめぐる資本の競争を取り上げ、特別剰余価値の生産をめぐる競争が、労働生産性を不断に上昇させ、全体としてあらゆる商品の価値が低下すること、それが労働者の生活手段の価値の低下を招き、労働日一定のもとでも剰余価値が拡大しうることを整理しました。どちらかというと経済学史や経済原論マターの問題ですが、この資本主義の基本原理を抑えておくことで、生産管理と労働者の熟練の問題、すなわち、テイラーシステムやフォードシステムなど経営学でなじみのある領域にもスムーズに接近することができるのではないかという考えの下で授業をしています。その後は経済のグローバル化と地域経済について学説史の紹介も踏まえながら講義をする予定です。
全体的な傾向として受講者はおおむねまじめで、きちんと授業に臨む姿勢を持っていることは好ましいことです。また外書購読などでも積極的に討論をしようとする姿勢が見られることは、教員としてうれしい限りです。前期は少し授業の組みなおしで時間を要することが考えられますが、毎回の授業をきちんと丁寧に行うことが自分の研究の整理にもつながるということを、改めて実感しているしだいです。
さて、先日はある新聞社の記者の方から非正規雇用問題で取材を受けました。非正規雇用問題の現状、背景、政策課題という大きく3つの枠組みで議論をしました。課題というか対応策のところで、公的職業訓練の役割や技能形成の話が出ました。非正規労働者の社会的包摂の問題、とくに国民年金雇用保険からの排除の問題は、正規雇用中心の社会保障設計と密接なかかわりを持ちます。私自身は雇用の問題を地域の中小企業の問題としてあるいは、地域経済の持続可能性の問題として理解してこうと考えているので、前者の公的職業訓練の問題についてはきちんとフォローできていない部分があります。おそらく、技能形成によるキャリア形成を展開する方向性は、企業に「適応」する方法として一理あるが、従来の学歴社会をベースとした日本の学校体系が残る現状では、その効果に限定があるのではないかという思いがあるのかもしれません。ただし、記者の方との質疑を通じて、職業訓練についても現状も含めてきちんと勉強し、授業にも反映させる必要があるのかなとも思い直しました。当面の仕事は、某原稿。締め切りを延ばしていただいているので、GW中になんとか書き上げたいと思います。