論点メモ
中小企業論をかじりだしたので、分業と協業について気になっている。最近はネットワークとかコーディネートとか議論がされているが、そもそもは分業の範疇である。古典的なマルクス『資本論』の相対的剰余価値の生産のなかでの「分業」は企業内分業がメインで社会的分業はあまり扱われていない。中小企業は専門化された工程間分業を担う企業が多く、縫製・アパレルを念頭においても分業と同時にいかに協業を行っているのかは理論的に把握すべき論点。
マルクスの工場内分業と社会的分業の関係は、「分業とマニュファクチュア」で扱われている(基礎研の解説はこちら)。
・工場内では労働者は部分労働者となる。すなわち、針金を伸ばす、切る、尖らすといった工程を従来は、各個人で職人が行っていたが、スミスの例にあるように、これは分業化される(労働の分割)。
・分割された労働に各労働者が割り当てられ、労働者は十全よりも専門化された技能で各工程を効率よく従事することができる。これは「部分労働者」である。
・工場内では最終的に資本家が工場の全体管理を行う。労働者は資本家に雇われてはじめて部分労働者としての技能を発揮するのであるから、すなわち「雇われ」なければ、こうした部分労働者の結集は行われないのであるから、労働生産性の上昇は資本の生産力として現れる。それが「全体労働者」として結実する。
岡山県の繊維産地の場合、これらが産地して中小企業の分業と協業によって担われている。おそらく多くの産地でも同様の事例がみられる。つまり個別企業内での分業ではなく、中小企業間の工程間分業として実施されている。工場内分業の論理が、社会的分業の新たな形態として現れている。
またある文献(泉俊弘「資本蓄積と『地域的分業』」)によれば、分業は3つの工程によって行われている。
・一般的分業…農業や工業など大部門への生産の分割
・特殊的分業…生産部門への特化
・個別的分業…作業場内の分業と協業
これらは市場の独占化に伴う中小企業の存立基盤論と重なる。「大資本による中小資本の駆逐と同時に、広範な中小企業の残存・新生を伴う」という北原勇『独占資本主義の理論』の説明につながってくる。
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さて、問題はグローバル化によってこれらの社会的分業の形態がいかに変化したのかという論点である。これが従来、産地内に企業がたくさん存在することによって優位性を構築してきた産業集積の崩壊の論理につながってくる。ひとつの視点はグローバル化に伴って情報通信産業が発展し、交通なども移動のデメリットがほとんとなくなったという点。これは渋井康弘らの議論につながってくる。ここら辺の整理が必要だ…。