中小企業と地域内再投資

8月に2回ほど倉敷市児島に調査に行きました。8月上旬は岡山経済研究所や倉敷ファッションセンター。後半は企業さん中心です。後半は合計5か所を訪問しましたが、現在テープ起こしを進めています。ようやく、ざっとした文章お越しが終わり、これから整理する段階です。1回あたり1時間30分〜2時間程度のインタビュー(ヒアリング)をしますから、これを完全にテープ起こしをするのは大変です。予算と時間に余裕があれば、業者に委託する方法もあります(2時間でおおよそ2万円から3万円が相場)。全体の流れを整理するためにも5か所すべてのテープ起こしをやりました。それも1人で。単純計算で3万円×5本=15万円の予算削減です。幸い、大学は講義はありませんので、研究室で集中してやりました。それでも荒いテープ起こしに4日間はかかりました。

企業情報もあり、相手先の了承を得ておりませんので、現段階では具体的な企業名は挙げられません。しかし、倉敷市児島地区の繊維産業で働く中小企業経営者の方は、いずれもエネルギッシュな方たちばかりでした。インタビューの中で、行政や地域に対する不満の声もあげられていましたが、それはひとえに地域に対する愛着があってのことだと思います。縮小する繊維産業の中で、しかも中国が経済発展して、バングラディッシュやインド、ベトナムに縫製工場が移転するという話が出ている中で(いわゆるチャイナプラスワン)、どうやって日本の産地が元気を取り戻していくのかというのは、繊維産業に限らず多くの産業に共通する課題でしょう。従業員定着のために工夫をしたり、他の会社には負けない独自の技術やノウハウを蓄積したり、誰も思いつかなかった産業を考えたり、本当に頑張っておられるというのが率直な印象です。こういう方が地域にいれば、日本の将来も暗くないと直感的に思います。

日本経済再生のために「地域内再投資」という概念が指摘されています。大手企業は本社機能のみ地域に残し、最適立地の観点から、工場や生産設備を海外に移転することは資本の論理からして当然です。しかし、中国での人件費の高騰や旧正月に伴って中国人労働者がいなくなってしまうという状況、あるいは日本から生地など製品を現地へ輸出することのコストなどを総合的に考えると、必ずしも海外生産で規模のメリットが生ずるとは限りません。むしろ消費者に一番近い地域に工場や販売店をおくことのメリットもあるはずです。中国の不安定な状況から逆に日本の産地に受注が増えているという状況もあります(例えば石川の事例。インタビューでもそういう話はありました)。こうしたことを考えると、大企業ではなく、地域に根差したフットワークの軽い中小企業こそ日本経済の内発的発展を支える主体になりうると思います。これをパッケージとして、産地の魅力としてどう行政や政府はうち出していけるのでしょうか。以上の課題は、私自身今一度整理し、中間発表として論文あるいはリビューの形で、発表していき、研究者の中での意見を聞きたいと思っています。まあこれからが本当にしんどくなってくるのだけれど。