田野大輔『ファシズムの教室』大月書店、2020年。
田野大輔『ファシズムの教室』大月書店、2020年。甲南大学での講義実践を紹介し、現代のファシズムまで広げて考察する本。大学におけるアクティブラーニングの実践としても、社会問題と人間の意識の関係を考えるうえでも、役立つ本。期待を裏切らない内容。
講義時間に、「ハイル、タノ!」と敬礼し、集団で白シャツとジーンズを履いて、学内のカップル(もちろん仕込み)に対して「リア充爆発しろ!」と糾弾する。抵抗感ある学生も次第に高揚感を覚えていく。簡単にいえば、服従することの快感、責任を問われないことへのやりやすさ、を実感する。ここにファシズムの原型があるとする。
本書では現代日本の拝外主義、ナショナリズム的傾向にも考察をむけている。ファシズム体験に対して、その危険性も指摘されている。ただし筆者は、「寝た子を起こすな!」「危険な思想を教えるな!」だけでは問題は、解決されないとする。
例えば、若者に人気の歌手が歌った、母国への愛国とされる歌詞には、タブー視される姿勢への反抗が含まれている。「日本を愛して何が悪い!」という素朴な考えが、実際には、排外主義的な思想や、権力構造と結びつき、絡み取られている。ある種の排外主義的な思想が、実際には、戦後民主主義的な価値観(それは教員などがもつスタンダードな価値観でもある)への「抵抗」であるとみられている。だからこそ支持されている。そのことの危険性を実体験を用いて考えることをねらっている。