清水洋『野生化するイノベーション』新潮社、2019年。

 清水洋『野生化するイノベーション』新潮社、2019年。歴史的観点から技術革新の条件を探ったもの。読みやすくて一気に読んだ。流動性の高さは技術革新を生む一つの条件。米国は流動性が高く、スタートアップ企業への金銭的補助もあるので、技術革新が相対的に多い。他方で、日本は流動性が相対的に低いので、革新的な技術革新は起きにくい。このあたりの話は比較的よく言われている話。

 そこから、直線的に、人材の流動性を高くすれば、日本でも技術革新が起こるとは言わない。米国の場合は国防予算で基礎研究を担保している。日本にはそれがないので、流動性の高さだけ追求すれば、目先の利益にとらわれて先細りする。だから単純に米国型の流動性追求をすればいいという話でもない。

 ただし、流動性の高さが技術革新を生む条件のひとつであるのは事実。新たなイノベーションが起これば、既存の仕事が陳腐化し、失業者が増える可能性が高いので、セーフティーネットの構築とセットで進めるべき。おおよそこのような主張。

 「野生化する」というタイトルがうまい。動物のように技術はどんどん移動する。実は技術革新にマネジメントはむかないし、できない。囲い込むことがおかしい。そうした主張が「野生」という言葉で表現されている。最後に、あとがきで、東京都国立市の「いたりあ小僧」に感謝していて、ちょっと笑った。

野生化するイノベーション: 日本経済「失われた20年」を超える (新潮選書)

野生化するイノベーション: 日本経済「失われた20年」を超える (新潮選書)

  • 作者:清水 洋
  • 発売日: 2019/08/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)