郝仁編『ストする中国』彩流社、2018年

 郝仁(ハオレン)編『ストする中国』彩流社、2018年。2010年以降頻出する中国工場におけるストライキの主体にインタビューし、その内容を記録したもの。賃下げ、労働条件引き上げ、2つのパタンに整理している。

 最低賃金の引き上げに対し、福利厚生を引き下げる。物価上昇に対して、賃上げが少ない。食堂のご飯がまずい、虫が入っている。カップラーメンのお湯代金を天引きするのは、やめてほしい。労働者の不満は、例えばこのようなもの。

 ストライキの主体になるのは、職場で信頼があり、技能も相対的に高い労働者。そもそも農民工など地方出身者に労働者としての権利はほとんどない。だからこそ、ストライキという手段に訴える。東莞(ドンガン)や香港などで起こっている事実が生々しく語られる。

 明治大学の石井知章教授の解説。2000年代以降のストライキは、国営企業のリストラへの対抗など、官製主導の労働組合とは異なる。工会加盟の正規労働者以外の、農民工なの反発。上からではなく、下から持ち上がったことが特徴。石井氏は新たなストライキの動向を、中国における個別的労使関係から、集団的労使関係への変化と捉えている。あるいは、中国労使関係の市場化とも呼んでいる。

 本書を読むと、正規労働者と非正規労働者の利害関係の違い、それに対する労働組合の役割などは、日本の雇用形態格差と似ている側面があることがわかる。ただし、中国の場合は、官製労働組合以外は法的に認められていない。農民工の利害が反映される、そのような場所として、労働組合のうねりができるのか、重要な課題である。

 企業内の交渉主体として認める。労働条件引き上げの対象として、対等のパートナーとみる。日系企業も含めた外資経営者が、農民工をそのように認識しなければ、高い離職率は変わらないのではないか。そのように感じた。

ストする中国;非正規労働者の闘いと証言

ストする中国;非正規労働者の闘いと証言