岩渕健輔『日本ラグビー論』ベースボールマガジン社、2016年。

 リオオリンピックでのラグビーセブンス日本代表の活躍に触発されて読んだ。筆者はラグビー日本協会のGMジェネラルマネージャー)。ヘッドコーチが担うスキルコーチングを担うのではなく、強豪国とのマッチングや、サンウルブスの新たな参戦など、主にチーム・選手の環境整備を担当する。エディジャパンのときに、どのような立ち回りを演じたのか、エディ・ジョーンズとはどんな人間なのか、そのあたりの説明が全体の半分近くを占めるが、後半にセブンス強化についての記述もある。

 筆者は「日本人はスキルと体力はあるが、対格で負けている」というよく聞かれる「神話」を疑問視し、世界レベルのフィットネス強化が必要だとの認識に立つ。フィットネス強化を行うためには、日本国内の閉ざされた世界だけを知るコーチでは不十分。世界中でコーチングし、かつ日本でも指導経験のあるエディに声をかける。エディの性格からして、選手との軋轢はおりこみずみ。想定外はエディがサンウルブスの指導から離れたことと筆者は指摘する。岩渕によれば、日本代表中心に年間を動かすことの難しさは、日本のラグビーが企業スポーツであることにも起因する。チーム成績を重視すれば主力選手がチームをなはれることはマイナスだからである。これをまず代表中心にまわすことがエディジャパンのスタートだったという。

 サッカーや野球など他競技への言及もあり、広くリーダーシップ論、組織論的にも読める。ただし、他競技への言及の場合には伝聞系の記述が多く、比較組織論にはなっていない。その点を差し引き、今後のラグビー日本代表の展望を考えるためには、読んで損はないだろう。

日本ラグビー論

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