柏木ハルコ『健康で文化的な最低限度の生活』小学館

卒業生に勧められて読む。公務員として福祉課に配属された女性の物語。生活保護を支給するという仕事がどのようなものなのか、その苦悩や喜びが書かれている。生活保護を支給する立場からすると、「その人の生活がどのようなものなのか」、「仕事はする見込みはあるのか」、「生活困窮に陥っていないのか」、それを日々確認する。電話や場合によっては家庭も訪問する。他人の家に行くということは、家族がいたり、いなかったり、離婚したり、両親と同居していたり、そうしたプライベートな空間を覗くことでもある。さらに、生活困窮に陥っているという前提で、保護費を支給しているために、「お金」にまつわるトラブルも存在する。そうした様子が丁寧に描かれる。同僚の中にも「働けば何かが切り開ける」と主張するものから、その道のプロといった福祉専門職まで、様々。おそらく、この漫画の価値がある点は、丁寧な取材に基づく生活保護の実態を描いているという点に加えて、ひとりの生活者、国民としてこうした仕事に関わった場合、「自分なら何ができるのか」、という点を問いかけている点であると思う。「不正受給許せん!」「パチンコばかりしている」という偏見に満ちたステレオタイプな言説は、現場に身を置くと、ある意味空虚にも見える。自分だったら何ができるのか、その道のプロになるとはどのようなものなのか、それを問いかける好著と言える。続きを早く読みたい、というのが現時点での感想。