最近読んだ小川進『QRコードの奇跡』日本経済新聞社、2020年では、1)オープンソース化、2)利用者の業務知識の組み合わせ、その2点が当該製品の成功要因であると分析されている。1980年代のトヨタのカンバン方式の電子化のために開発されたのがQRコード。当初は企業間取引の効率化のための手法であったが、国際標準化の流れとともに、2000年代以降消費者ニーズにこたえる形で拡大した。これらの現象を踏まえて、日経書評では、「ユーザーイノベーション」と評価されている。
巽真理子『イクメンじゃない「父親の子育て」』晃洋書房、2018年。父親のジェンダー規範の変化を検討している。2000年代後半以降の男性は、「一家の稼ぎ主」という男らしさと、「ケアとしての子育て」の実践の間で揺らいでいる。本書では、1)厚生労働省のイクメンプロジェクト、2)育児雑誌、3)父親9名へのインタビューを通じて、丁寧な分析で読み解いている。
人々はみな、職場、家庭、地域の中でそれぞれの固有の役割があり、境界線を行き来している。職場での承認、家庭での承認、地域での承認が何らかの形で得られれば、実体としての「ケアとしての子育て」に従事できる可能性が高い。これが本書のメッセージであるように思われる。
どのように子育てにかかわるのか、という点は、当事者として実践的な問題であると同時に、研究者として見た場合、このような問題をどのような切り口で攻めるのかの問題でもある。当該分野の先行研究に必ずしも明るくないが、読み物として面白く、かつ学術的な刺激も受けた。
安藤俊介『怒りが消える 心のトレーニング』 ディスカヴァー・トゥエンティワン、2018年。アンガーマネジメントの本。怒りを感じること自体は問題とはとらえていない。他者に対して怒りの源泉をどのように伝えるのか、また怒りをそのままぶつけてしまっては、健全な人間関係が構築されないなど含蓄に富む指摘が多い。
怒りを感じた時に、その事実、場所、対応策などを事細かに記録するアンガーログの教えが、参考になった。コロナ拡大以降、自宅にいることも多く、子供との言い争いも多くなっている。とても勉強になった。