巽真理子『イクメンじゃない「父親の子育て」』晃洋書房、2018年

 巽真理子『イクメンじゃない「父親の子育て」』晃洋書房、2018年。父親のジェンダー規範の変化を検討している。2000年代後半以降の男性は、「一家の稼ぎ主」という男らしさと、「ケアとしての子育て」の実践の間で揺らいでいる。本書では、1)厚生労働省イクメンプロジェクト、2)育児雑誌、3)父親9名へのインタビューを通じて、丁寧な分析で読み解いている。

 人々はみな、職場、家庭、地域の中でそれぞれの固有の役割があり、境界線を行き来している。職場での承認、家庭での承認、地域での承認が何らかの形で得られれば、実体としての「ケアとしての子育て」に従事できる可能性が高い。これが本書のメッセージであるように思われる。

 どのように子育てにかかわるのか、という点は、当事者として実践的な問題であると同時に、研究者として見た場合、このような問題をどのような切り口で攻めるのかの問題でもある。当該分野の先行研究に必ずしも明るくないが、読み物として面白く、かつ学術的な刺激も受けた。