学会参加して感じたこと

フェイスブックでも書いたのですが、自分の記録用にこちらにも。学会では、同世代か少し上の優秀な方は、単著を出し始めている。テーマは様々であるが、対象とするフィールドが社会的に意義のあるもので、それを自ら足で稼いで得た情報を下に、先行研究で未解明の問題にチャレンジしているものが多い。例えば、非正規労働者の労働運動、請負労働者の労働実態、地方都市のホームレス、などなどである。私はこれまで政治経済学の古典を学びながら現実の労働問題にアクセスしてきた。大学院の指導教員も経済原論を専門としている。そのため、現実のフィールドに関心を持ちながらも、まずは基礎的な勉強をという思いもあり、フィールド調査などはできなかった。これはいいわけであるが、今から考えれば、他の研究会に参加するなり、調査に入れてもらうなどするなり、それなりの工夫をすれば、フィールド研究はできたはずである。でも、どのような対象を分析すればいいのか、あるいはどこに入ればいいのか、その土地勘はまったくなかった。研究者としての自身もなかった。だから、地道な研究を開始したというのが当初の考えである。

地方都市のホームレス: 実態と支援策

地方都市のホームレス: 実態と支援策

ドキュメント 請負労働180日

ドキュメント 請負労働180日

先日の学会では、私より下の世代の研究者が、今まさに解明が求められている重要なテーマを、参与観察と、聞き取りで丁寧に事実を整理するという手法で報告をしていた。少子化が進み、女性の社会進出が確認され、待機児童問題が深刻化している。地方自治体は、行政の役割を強調するために、「待機児童ゼロ」を掲げることが多くなった。しかし、その手法は保育の質や中身に注意を払っているものはほとんどない。失業者に対して、仕事があればなんでもいいだろ、というロジックで派遣労働などを拡大してきたのと同じように、保育園(あるいはそれに類似する施設)に、希望者を入れるということのみが行われている。それらは保育を本来、人間発達の指標として、単なる単純労働ではない、保育労働の解明を前提としているはずである。だが、現実には保育者の保育労働の中身や、それらが子供に与えることの社会科学的研究は進んでいない。だから、この問題を自らのオリジナルな資料収集にもとづいて解明することは社会的に多いにある。

話を元に戻そう。翻って私が時間をかけ、社会的に問うべき課題は何なのか。こうしたことを学会に参加するたびに考える。フィールド調査を綿密に行うことに、自信があるわけではない。それらを理論的フレームワークに落とすこと、そのための作業が必要だと思っている。他方、最近力を入れている当該産業に関する研究蓄積は、非常に少ない。その点で価値があるとは思っている。業績のための業績ではなく、十分に時間をかけて出すべき研究成果を準備したい。それが何なのかと考えたときに、現代資本主義論のような大きな枠組みなのか、それとも対象を絞った綿密な情報の整理なのか、どちらなのかが、分からない部分がたくさんある。ただいえるのは、社会政策学会のような学会で評価されるのは、後者だという点である。5年程度をスパンに研究成果を出すということを本格的に考えなければならない、それはおそらく確実だと思われる。