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若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱)

若者よ、マルクスを読もう (20歳代の模索と情熱)

 大手書店では30冊ほど平積みされていた。内田のネームバリューもあってよく売れているのだろう。石川→内田→石川・・・の順番で5本の著作についての要約とコメントが行われる。このテキストでは、石川が丁寧な原典に即した解説を行うのに対し、内田が自身の興味にひきつけてコメントを行うという形式をとっている。石川の解説があって、内田のコメントが生きているのであり、一見すると「水と油」と思える二人の論者がお互いの意見を尊重しつつのべる好著となっている。読者は2人が奏でる心地よいハーモニーを感じることができるだろう。

「なんだかよくわからんが、ここにはものすごい世界がありそうだ」(25頁)とは『共産党宣言』を読んだ石川(大学1年生のとき)の言葉。それに対して内田は、マルクスを数頁読むだけで、頭の中を一陣の涼風が吹きぬけるような気がする」、「マルクスは僕の問題を解決してくれない。けれども、マルクスを読むとぼくは自分の問題を自分の手で解決しなければならないということがわかる」(38、39頁)とマルクスを読むことの爽快感を語る。読者をアカデミックハイにさせてくれるマルクスの奥深さ、これを語る内田の文章はとても魅力的である。

「高校生向け」(まえがき1頁)にしては幾分難しいが、研究者・知識人がなぜマルクスを好むのかを体感することができる。若い人が直接マルクスを読むことの意義を感じさせる。マルクスの『資本論』も含む以後の著作に関する続編をぜひ期待したい。