感想

ドキュメント 請負労働180日

ドキュメント 請負労働180日

半分ほど読みましたが、大変読みやすく、かつシンプルな内容を大変丁寧に記述している点が特徴だと思います。研究者であれば前提とすべき内容も、噛み砕いて、書かれていて、一般読者にとって親切な作りになっています。私自身は1章を読んでいていくつか論点があることがはっきりしました。とくに人材派遣会社を理論的にどう位置づけるのか解明する必要性を感じました。これは著者が取り組まれたこれまでの研究上の貢献が決して損なわれるという意味ではなく、著作が提起するファクトファインディングが極めてシャープであるからこそ、出てきた課題だと思います(たとえば、本書では直接的な言及はありませんが、請負会社での労働が頻繁に持ち場が変わることを提示することによって、知的熟練論に対する有力な反論になっています)。したがって、この課題は私も含めた研究者が取り組むべき課題であるといえます。本書の内容からはずれてしまいましたが、いずれにせよ、この本は多くの人に読まれるべき文献です。私も学生に薦めたいと思います。