経済学の参考文献

新年最初の講義は、最終課題を除いて最後でした。来週はoffice hour、再来週が最終課題です。経済学の授業では後期はGDP概念やグローバル経済と産業空洞化問題、日銀の金融政策やトヨタ生産システムをめぐる議論、株式会社と企業統治を扱ってきました。グローバル企業は一般的に大企業なわけですが、日本の企業数の99.7%、従業員数で約7割は中小企業です(中小企業庁ウェブサイト)。その観点から見れば、中小企業や地域経済の視点から持続可能な発展の可能性を探る必要があります。

今日の講義のテーマは、地域経済と中小企業の役割という設定をしました。自分の講義の中で「中小企業」を独自のテーマとして取り扱ったのは、これが初めてです。中小企業とは何か、なぜ企業一般ではなく、規模を問題にするのか、中小企業論が扱う領域とは何かから始め、中小企業で働くことの意義を説明しました。その際に利用した文献は下記のとおりですが、とりわけ渡辺幸男先生執筆の部分は大いに参考にしました(『21世紀中小企業論』)。

21世紀中小企業論―多様性と可能性を探る (有斐閣アルマ)

21世紀中小企業論―多様性と可能性を探る (有斐閣アルマ)

中小企業・ベンチャー企業論 (有斐閣コンパクト)

中小企業・ベンチャー企業論 (有斐閣コンパクト)

まちづくりを学ぶ -- 地域再生の見取り図 (有斐閣ブックス)

まちづくりを学ぶ -- 地域再生の見取り図 (有斐閣ブックス)

有斐閣の最初2冊のテキストは、中小企業論の教科書として双方とも良質なものといえます。カバーする範囲も手広く、理論的なところから現代的なところまで対象としています。しいて言えば、1冊目のテキストはより高度、2冊目のテキストはより初学者向けといえます。

さて、講義の中盤戦では中小企業の多くが地域との関係を重視せざるを得ないこと、これらは伝統的には地場産業としてくくられてきたことを紹介し、社会的分業としての中小企業の役割を説明しました。そして、岡山県ジーンズ生産の特徴を紹介して、最後に田川市郡の取り組みを検討しました。グローバル多国籍企業と地域中小企業は地域経済に果たす役割と意義が本質的に異なるものです。第1次産業も含めた広義の地場産業が地域に密着して生き残る道のひとつは、異業種交流やネットワークの構築にあることを最後に指摘しました。