今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』岩波新書、2016年。

 今野晴貴『ブラックバイト 学生が危ない』岩波新書、2016年。学生アルバイトの「基幹労働力化」の現状を鋭く描く。コンビニに代表されるフランチャイズ経営の広がりで、本店、店長、アルバイトの重層構造が形成されている点も指摘。「やりがいの搾取」とは質的に異なる経営上の「必要性」の論理を新たに提示している。ギリギリまで人員を削る形がサービス産業のビジネスモデルとなる。無理な働き方を前提とするから、人手不足。このあたりはあらゆる業種に共通の現象といえる。
 働き方の再構築という点で、中小企業をどう位置付けるか。労働者教育の重要性は言うまでもないが、それらの動きと中小企業家運動はどう関連付けられるのか。あるいは、現状では悪い労働条件でも将来的にあがりうる場合。企業規模が徐々に大きくなる場合。これらはブラック企業と呼べるのだろうか。日本的経営への回帰ではないが、志のある中小企業こそ、人材管理を成長志向にする。長期安定雇用、年功賃金。見返りある滅私奉公ではない、ワークライフバランス型の日本的経営もありうる。このあたりの評価と組み込みが必要なのではないだろうか。