岡山出張の往復で、『日本の奨学金はこれでいいのか』を読む。日本の高等学校教育の私費負担の高さと並んで、奨学金が学生ローンと化している。そのことが、学生自体からアルバイトに従事せざるを得ず、ブラック企業化を促進するひとつの要因であることを説得的に示している。私費負担が高いことは、学生の受益者負担論を生む。それは大学における学びの主体としての学生を生み出さないという問題点をもたらす。苅谷剛彦氏がイギリスでの経験をまとめた本(『グローバル化時代の大学論2』http://d.hatena.ne.jp/asin/4121504305)のなかで、学生は在学時無料。卒業後に支払い能力に応じて学費負担をするという話をされていた。これは学費負担が応益負担ではなく、応能負担であるイギリスの実態を示す。といっても、学生の負担は日本の場合、学生本人ではなく、多くは家族の負担として実質的に行われておいる。これは日本型雇用の崩壊によって、学生自身も在学時にアルバイトに励まざるを得ない構造を生み出す。「ブラックバイト」にたえざるをえないのも、根本的には高学費体質があると思われる。
日本の奨学金はこれでいいのか! ―奨学金という名の貧困ビジネス
- 作者: 伊東達也,岩重佳治,大内裕和,藤島和也,三宅勝久,奨学金問題対策全国会議
- 出版社/メーカー: あけび書房
- 発売日: 2013/11/01
- メディア: 単行本
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