読書の秋:『ルポ虐待』『来たるべき民主主義』

読書の秋ですね。最近読んで面白かった新書を紹介します。

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)

ルポ 虐待: 大阪二児置き去り死事件 (ちくま新書)

『ルポ虐待』は、大阪での事件を3年間おったるポタージュ。本人だけではなく、実父、元夫、友人などの取材を重ねます。子供2人が餓死するという衝撃的なテーマで、中身は重いです。けれども、そこには日本型雇用が解体する局面での家族の在り方の変容と、女性の貧困問題の顕在化という本質的な問題が垣間見えます。テーマはセンシティブで、気持ちよく読めるものでは決してありませんが、僕は一気に読了しました。

『来たるべき民主主義』は、小平市道路建設をめぐって行われた住民投票が素材です。まず小平の住民訴訟の経緯が丁寧に紹介されています。これだけでも面白い。そして、反対派から賛成派がいるなかで、賛成派に対して反対派の意見をすり合わせる、そのような社会運動として把握の仕方を提起しています。この点で、湯浅誠さんの『ヒーローを待っていても世界は変わらない』に近い認識を持っているとの印象を持ちました(この本に対する感想はこちら)。後半部分は選挙制度以外の民主主義の制度をどう埋め込んでいくかがテーマです。実行力のある民主主義にするにはどうするか、新鮮な提起だったように思えます。