羽田圭介さんの『phantom』という本

 羽田圭介さんの『phantom』という本を読んだ。工場勤務の女性は、将来の経済不安を視野に入れて、日夜副業としてのトレード業務に打ち込む。配当などで生活できるように、友人との付き合いは切り詰める。恋人もまた、同じ工場勤務であるが、実家通いなので、生活スタイルに若干の違いがある。

 主人公はお金を使わない、倹約することで将来の資金を貯める。恋人は同じ工場勤務で年収250万円前後ながらも、お金という欲望から離れ、都心部で集団生活するネット社会の覇者に憧れる。月6000円弱の会費を払えば、有名なカリスマ的存在の生活スタイルを理解することができる。これにはまっている。

 主人公は途中で恋人とのお金や生活スタイルの違いに気づく。恋人は俗世間から離れてしってしまうので、それを取り戻すべく、とても高い手数料を払って、傭兵を雇う。そしてある種のカルト教団に近いところに内部潜入する。そんなお話。

 前半から後半に話ががらっと印象が変わるが、ストンと落ちるような感覚にはならなかった。カルト教団的な内容に踏み込むのであれば、そこにフォーカスる内容もありだと思う。低所得者や金融ノルマやネットビジネスにはまる姿に重点を置くということもできたようにも。でも書き出しの雰囲気というか、「あ、読んでみたいな」と、一気に読者を小説にめり込ませる文章力。そのあたりは、筆の運び力はすごいなと思った。