『最愛の子』2016年。

 中国の『最愛の子』という映画を見た。主人公は誘拐された子どもを追う元夫婦。二人はすでに離婚し、妻は再婚している。誘拐にあって同じような境遇にある親と救う会を結成し、子どもを捜す。ついに農村部に自身の子どもをいることを発見し、追いかける。刑事と一緒に現場に向かい、誘拐された実の子どもを取り戻す。しかし、数年のブランクは簡単に消えない。農村部で子どもを育てた女は、亡き夫が深センの女に産ませたと信じている。つまり、誘拐された子どもであることを知らないし、信じようとしない。

 このような状況で、物語は急展開を迎える。元夫婦にとっての実の子どもは、農村部を離れ都会の深センで、実の両親と新しい生活を送る。けれども、彼には一緒に農村部で育ったもうひとりの妹がいる。しかもこの妹は、「拾ってきた子ども」である。この妹は深センに引き取られ、児童養護施設でくらす。農村部の女性、育ての親は弁護士を立てて、児童養護施設にいる妹の養子ができないか、裁判を行う。とはいえ、誘拐犯の妻ということで、女の子を「拾ってきた」という主張は認められない。他方の実の親も、新しい夫と離婚調停中。離婚をしている状態では、養子の権利はみとめられない…。

 このように複雑な人間模様を描いた映画である。誘拐犯の妻といえども、実際には「育ての親」である。ここに問題の難しさがある。映画では子どもを誘拐された両親が、二人目を生む際に、「死亡証明」が必要であるというシーンが出てくる。中国の「一人っ子政策」をめぐる皮肉であるのだろう。とにかく複雑な人間関係を描くのだが、これが実話を基にしている点が最大の驚き。胸が締め付けられる思いでみることになるが、実の親にとっても、育ての親にとっても、子どもは子どもであるという事実をどう解きほぐすのか、考える点は多い。

最愛の子 [DVD]

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