就職難への対応

模擬講義準備にいそしむ。最近日経新聞を中心に報道されている学卒の就職難問題をどう考えたらいいのか思案する。まず考えられるのが、事実として「新規学卒一括採用」という日本的雇用はいまだに強く残っているということである。年功賃金の成果主義化や雇用の不安定化などは急速に進んだが、日本的雇用の入り口部分は旧態依然とした慣行であると認識されている。当然、労働市場をより流動化したい立場からは批判が出る。ここ数日の日経新聞の新規学卒一括採用批判のキャンペーンはその表れであろう。結果、若年層の就職難を解決するために、安定雇用の部分を残しつつも、試行的に中間形態の試用期間(テニュア制度)を設けるとの議論が出てくる(有賀健「新卒採用の偏重解消へ」『日本経済新聞』2010年10月7日付)。

テニュア制度の導入は経営者に事実上の解雇権を付与するという点で、フランスのCPE(初期雇用計画)とほぼ同じ中身である。果たしてこれで若年層の就職難問題は本質的に解決するだろうか。まず、有期雇用(の一種)が拡大すると、若年層も雇用拡大の機会を与えられるかもしれないが、それ以外に外部から有能な現役労働者の入職の可能性も否定できない。若年層の就職機会が拡大する可能性は五分五分である(新卒者と既卒者に限定するのであれば雇用とは呼べない)。次に、若年層が就職できず、失業者になることは長期的に解決すべきことであるが、問題は企業が新規採用を正社員で取らないことにある。テニュア制度の導入はこれらの問題に対する解答を与えるのだろうか。