徐々に

教育業務から解き放たれ、徐々研究モードに入っている。論文を読んだり、書いたりするには少し時間がかかるようだ。

賃金論を考える場合、賃金水準と賃金形態が問題になる。いずれの問題にしても、年功賃金(生活保障給)を擁護する立場からは、A・センの「焦点変数」(focal variable)の議論が有力な反証になるのではないかと思う。平等とはある一つの基準で見た平等であり、他の基準で見た不平等を伴う。だから、平等を考える上では基準を何に置くのかが重要であるというのがセンの議論である。「労働」を基準に平等を論じれば(同一価値労働同一賃金)、「必要」(家族数、子供の数など)を基準にした不平等が伴う。「必要」を企業が担うのか(日本型、米国型)、それとも国家が担うのか(欧州福祉国家型)がひとつの論点であるが、そこまでは今の段階では整理できていない。じつは、この点を積極的に議論している研究者は、数えるほどしかいない。社会哲学系の学者の言及が多いのかもしれない。

不平等の再検討―潜在能力と自由

不平等の再検討―潜在能力と自由

…ナンテネ。