読書

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

マルクスは生きている (平凡社新書 461)

話題の本である。初めのところでマルクス唯物論弁証法の元祖として説明されている。その中で、物理学における唯物弁証法の適用の問題が出てくる。古くは武谷三男からはじまって、湯川秀樹坂田昌一、そして益川敏英先生までその方法が手短に紹介されている。物理学における弁証法の細部は分からない(技術論論争をすこしかじった程度)が、自然科学における唯物論の適用問題はとても興味深い。物質や素材を「静態的」と見ずに、常に運動するものとして「矛盾」という視点から理解する点が大事なのかもしれない。

こちらも話題の映画「天使と悪魔」でも重要なテーマの一つは科学と宗教の対立にある。ここではキリスト教保守に対立する科学的思考をどのように位置づけるかが描かれている。宗教上の教義にとって不都合な科学上の発見をどのように位置づけるかという問題。科学とは目の前にあるものを、そのまま把握することからはじまる。だから、天動説に対する地動説がそうだったように、新たな「発見」がなされたときは、反発と批判が集中する。そうした点から考えるとさきの物理学の話もとっても興味深いのである(何を言っているのか、われながらさっぱりですが…)。

天使と悪魔 (上) (角川文庫)

天使と悪魔 (上) (角川文庫)