読書

派遣のリアル-300万人の悲鳴が聞こえる (宝島社新書)

派遣のリアル-300万人の悲鳴が聞こえる (宝島社新書)

Brics研究所の門倉さんの新作。別の本の書評原稿を書くための勉強と思い読書。全体として、派遣労働者の実数の推移や背景としての労働法制の規制緩和については教科書的なまとめが多く、おそらく研究者にとっては新たな知見が見つかるという本ではありません。

ただし、この本では10名弱の派遣労働者に対してインタビューがされており、事務仕事や製造業など業種ごとにどのような仕事をしていて、また派遣のお仕事をしている当本人が最近の労働問題の扱いについてどのような実感を持っているのか、を知ることができます。その点はメリット。とくに、労働者派遣法では禁止されている「事前面接」にたいして、「悪くないのではないか」という利用者の実感が載せられていますが、それについてはなるほどと思わせます。なぜ事前面接制度が法律で禁止されているのか、その背景についても指摘があれば、読者層のニーズにも応えられるものなったのではないかと思います。

おわりのほうで派遣労働者の費用がある会社では「人件費」以外のものとして計上されていることが扱われています。これは少し聞いてはいましたが、あらためて文章として読むと「衝撃」を覚えます*1

*1:少し文章を修正しました