感想2

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)

偽装請負―格差社会の労働現場 (朝日新書 43)

偽装請負』残り部分を読了。2章は松下プラズマディスプレイの話。偽装請負状態を回避するために、請負会社に本社社員を出向させるという「偽装出向」を起こっている事実が克明に報告されている。これには市政との補助金の絡みもあり、実情は複雑。「会社は公器である」という松下幸之助の言葉が皮肉にも乗せられている。

3章は人材派遣会社クリスタルの話。かなり早い段階から請負の仕事を行い、社員には徹底した業績主義で人材をとにかく集め、派遣(正確には請負)することを信条としたことが伝えられている。現在は、いま話題となっているコムスンの親会社「グッドウィル」に買収されているけれども、仕事のやり口がかなり鮮明に描かれている。

総じて、この本の記者の姿勢は大変鋭く、事実をきちんと伝えたいという「ジャーナリスト」としての立場が鮮明である。こうした姿勢にはとても好感が持てる。それにしても、正社員化をすすめると明言したキャノンや松下のその後が実は不鮮明であることは、この本でよく分かった。巨大メディアである朝日新聞がその気になれば、巨大企業の動きもある程度は規制できるのだ。

#本日発売の『週刊エコノミスト』に『偽装請負』の書評がありました。