小熊英二(2022)『基礎からわかる論文の書き方』講談社

 小熊英二(2022)『基礎からわかる論文の書き方』講談社。一気に読んだ。論文とは何か、ジャーナリストが書く文章とどう違うのか、などが多角的に論じられる。たとえば、どこかに行くときに、途中下車したところ、今いるところを示していくのが学術論文であるなど、いろいろなたとえを駆使しながら解説されている。

 科学的態度みたいなことも解説してある。ある現象を最もよく説明できるスタンスが学説として主流となるのであって、それは自然科学も社会科学も同じ。普遍的な原理がありそうであっても、それはあくまで現時点では最も確からしい説明方法に過ぎないからだ、という説明もある意味科学を相対化している。

 課題を設定し、すでに述べらていること、通説となっていることの限界を指摘し、それを乗り越える。いわれてみては当たり前のことを、受講者との対話形式にしながら説明している。読んでいると、科研費のような研究方法論の記述をする際にもアイディアになりそうな感じを受ける。類似の研究方法論、論文の書き方本と違うのは、単なる技術的な作法だけではないこと。学問的な姿勢や学問の意味など、普遍的な内容にも視野を広げている点が、読み物として面白い点かなと思う。

 

 

神野直彦『分かち合いの経済学』岩波新書、を10年ぶりくらいに手に取る

神野直彦『分かち合いの経済学』岩波新書、を10年ぶりくらいに手に取った。改革の基本線はいまでも変わっていないようにみえた。あとがきにでてくる初老の男性が川端康成であるというエピソード。以前読んだときは気に留めなかった。なんというか文学的な滑らかな文体である。口語聞き取りという側面もあるのかもしれない。

 

 

 

新年度始まる

新年度始まる。久しぶりにあう学生たちが楽しそうに話をする姿に心が洗われる。ジグザグあるだろうけど、この雰囲気が維持されるとよいな(^_^;)。履修登録は今日が締切だが、例年に比べると受講生数は落ち着きそうである。ここ数年の厳しめとなった評価基準が、受講生のあいだに浸透したのか。落ち着いた雰囲気の教室で講義をしたい。さてどうなるか(^^)。今年は久しぶりに調査も行きたい。不慣れなフィールドであるが、新しい農業分野の調査ができれば、視野が広がる気がする。文献研究とかなりの程度リンクできそうな、感覚も持っている。

名優アンソニーホプキンスの演技が光る

高齢化と介護の話。映画全体が、部屋から一歩たりとも外に出ない。終始部屋の中の風景で描かれる。名優アンソニーホプキンスの演技が光る。悲しいか向き合う必要のある現実。最近の映画で子育てや家族ものみて、心奪われることは多々あったけれど、介護関係では珍しい。海外映画だったことが新鮮に感じ、またよく知る名優の演技が迫真に迫っていたからかもしれない。

 

 

 

知的好奇心や愛情はどこへやら!?

研究者の同僚がお茶すると、事務作業への苦しみばかりの話になる。書類づくりやブルシットジョブが増えている。知的好奇心や愛情はどこへやら!?このあたりの『ブルシット・ジョブ』におけるグレーバーの指摘は、ほかのどの箇所にもまして、「あるある!」と頷きながら読む。

『ある男』を読み終えた

図書館で借りてきた『ある男』を読み終えた。受賞作一覧のような場所に置いてあったから借りたのだけれど、なかなか良かった。文章の書き方がなんというかなめらかで、豊富で、自分好みの文章である。ストーリーは複雑だが良い気分で読めた。入り組んでいるとはいえ、自分とは何者か。家族とは何か。そのあたりを在日コリアンである主人公の弁護士を通じて描き出す小説として読んだ。平野啓一郎氏の小説ははじめて読んだが、結構気に入ったので、別の小説も読んでみたい。