小熊英二(2022)『基礎からわかる論文の書き方』講談社

 小熊英二(2022)『基礎からわかる論文の書き方』講談社。一気に読んだ。論文とは何か、ジャーナリストが書く文章とどう違うのか、などが多角的に論じられる。たとえば、どこかに行くときに、途中下車したところ、今いるところを示していくのが学術論文であるなど、いろいろなたとえを駆使しながら解説されている。

 科学的態度みたいなことも解説してある。ある現象を最もよく説明できるスタンスが学説として主流となるのであって、それは自然科学も社会科学も同じ。普遍的な原理がありそうであっても、それはあくまで現時点では最も確からしい説明方法に過ぎないからだ、という説明もある意味科学を相対化している。

 課題を設定し、すでに述べらていること、通説となっていることの限界を指摘し、それを乗り越える。いわれてみては当たり前のことを、受講者との対話形式にしながら説明している。読んでいると、科研費のような研究方法論の記述をする際にもアイディアになりそうな感じを受ける。類似の研究方法論、論文の書き方本と違うのは、単なる技術的な作法だけではないこと。学問的な姿勢や学問の意味など、普遍的な内容にも視野を広げている点が、読み物として面白い点かなと思う。