桐野夏生『日没』岩波書店、2020年。読んだ

 桐野夏生『日没』岩波書店、2020年。読んだ。最初から最後までとにかく怖い。ホラー映画ならぬ、ホラー小説ともいえるかも。読み物としては面白く、細かな描写におどおどすることもあるが、面白い。主人公の意識及び体が退化していく様子がなんともいえない不気味さを持つ。

 小説として、何が言いたいの?という突っ込みがありそうだが、社会風刺になるのかなと思う。ヘイトスピーチ規制法ができ、共謀罪が適用される時代に、過激な描写を行う小説家が、表現規制の対象となる。反省を強いるため、療養所に送り込まれる。ある意味近未来的な社会風刺がモチーフになっている。

 なんだか、他の国の出来事のようだが、日本の話。ひっそりと地方の片隅の療養所でこうした出来事が起こっている。そのことを多くの人は知らない。こうした描写がSF的ではあるが、妙なリアリティを感じさせる。恐怖の小説。

日没

日没

  • 作者:桐野 夏生
  • 発売日: 2020/09/30
  • メディア: 単行本