田中俊之『男子が10代のうちに考えておきたいこと』岩波ジュニア新書、2019年

 田中俊之『男子が10代のうちに考えておきたいこと』岩波ジュニア新書、2019年。男性と女性がおかれる社会的役割の違い、男は泣いてはいけない、女子のすごいねーの意味など、身近な問題を切り口にジェンダーを論じている。テーマはありふれたものだけれど、男子高校生に語るというスタイルがユニーク。

 著者のかつての本では男性視点からのジェンダー論、すなわち男性学というスタンスが強かったように思えるが、今回の本はバランスよくジェンダーセクシャリティの問題に切り込んでいる。家族、労働、ジェンダーを、考える好著。

 あとがきで、自身も子供が生まれて執筆活動が停滞したこと、今回の本が数年ぶりの著者であること、子育てと執筆活動をともにこなす方法はあきらめたことなどが語られる。研究活動と家庭生活の両立は、男性学の著者にとっても困難。だとすると自分は、何ができるのかな。何もできていないな、と考えた(どうにかしたくて、もがいている)。良い本なので学生にも薦めたい。

 

男子が10代のうちに考えておきたいこと (岩波ジュニア新書)

男子が10代のうちに考えておきたいこと (岩波ジュニア新書)