NHKスペシャル「ノモンハン 責任なき戦い」2018年8月15日放送

 NHKスペシャルノモンハン事件ソ連と中国【満州】の国境間際で行われた地上戦。日本側はソ連の軍備状況を見誤り、無謀な境界戦に挑む。西側はドイツ、東側は日本にはさまれたソ連スターリン側は、容易に東側に注意をさくことはできないだろう。曖昧な境界線では先制攻撃をしよう。このような考え方で関東軍は戦闘を挑む。ソ連側はひそかにドイツとの友好関係を築いている。そのため、日本の知らない間に、東の国境間際に兵士や軍隊を徐々におくる準備を進める。日本側は、関東軍のある少尉の発案で、積極的に攻める決意をする。境界線を攻める場合には、天皇の了承を得てから進めるという方針も無視して、突き進む。見通しのまったく甘かった戦いで、日本軍は当然苦戦する。草原のくぼみに防空壕のようなものをつくり、食事や兵器を隠す。その後がいまでも残っている。日本側は壊滅状態に陥り、軍隊の一部は途中で撤退を決断する。決断した隊のリーダーは、その後、「自決」を迫られる。境界間際の戦いを主導した関東軍の中心人物は責任を取らない。こうした状況をモンゴルへの現地取材、当時闘った関係者やその親族への取材、新たにみつかった陸軍への取材テープなどをもとに検証していく。

 モンゴル付近で戦闘に加わった方が取材に答えている。自決を迫られた隊長の親族が手紙のやり取りを保存している。関東軍で境界線での戦争を主導したといわれる人物の親族が登場している。戦闘行為というざっくりしたくくりの中にも、兵士とその家族がいる。なぜ父が死んだのか、その理由もわからない家族が多数いる。問題の構造を隠蔽し、責任を明らかにしない。当時の軍隊組織の問題点を、リアルに迫っている。その全てがNHKだからこそ成し遂げた内容ともいえる。兵士個人の視点から戦争に焦点を当てていることもすばらしい。良心的な番組。

NHKスペシャルノモンハン 責任なき戦い」2018年8月15日放送
http://www6.nhk.or.jp/special/detail/index.html?aid=20180815