映画『永い言い訳』2017年。

 映画『永い言い訳』2017年。小説家の主人公。理容点で働く妻がいるが、愛情が冷めている。妻が友人とバス旅行に出かける。不慮の事故にあって亡くなる。そのとき主人公は愛人と一緒にいた。小説家の主人公は、妻がなくなってから、生活リズムがかわる。バス事故の被害者つながりで、妻の友人だった家族と接点を持つ。兄、妹、そしてトラック運転手の父。母不在で家庭がうまく回っていない。お兄ちゃんの塾の送り迎えから、手伝いをすることになる。送り迎えをして、一緒にご飯をつくる中で、今までの自分とは違う人間らしさを取り戻す。概ねそのような話。
 主演の本木雅弘さんのよい演技が光る。自意識過剰で、自分のことしか考えていない、テレビやメディア向けの見られ方ばかりを意識している。そんな男性を絶妙に描き出している。その男性が、妻の友人だった家族と接点を持つことで、徐々に変わり始める。そうした描写が、なんとも上手い。家族の雰囲気、たとえば兄弟や、親と子どもの喧嘩の仕方、みていて「そうなっては駄目だよ」と思うシーンがいくつかある。でも、主人公はある程度、距離を置き、自分は「そうした家族とは違うのだ」と観念する。観念の具合も男性の孤独さを表現している。妻は序盤にしか出てこない。終始、男性目線の映画とはいえ、家族関係や子供との関係の描き方がうまいと思った。