NHKスペシャル マネー・ワールド~資本主義の未来~第2集 仕事がなくなる(2018年10月7日放送)

 マネーワールド第2弾。AI・機械化による資本主義の変容。AI導入によって定型的な仕事は減少する。たとえば、ショッピングモールでは、営業時間外の清掃は、すでに清掃ロボットが代替しているケースがある。他方で、創造性を必要とする仕事、たとえば、AIを開発するエンジニア、人間の視覚に訴えるグラフィックデザイナー、これらは人間にしかできない仕事として残る。定型的な仕事を失った労働者はどうするのか。生活保障の枠組みとして、注目されているのがベーシックインカム構想。諸外国では財源確保して、実践に移している場合もある。

 ソフトバンク孫正義氏。前進するところを止めるのはいけない。拡大された富を分配することが必要。ロボット税のような形で、トップランナーの足かせをすることには反対。

 国立情報学研究所教授の新井紀子氏。才能を持つ人間は全体の数%。残りの99%は定型的な業務に従事する。資本家の立場から、「おまえらがんばれ」というのは、責任転嫁ではないか。また、ベーシックインカムの財源については、法人税強化の手法があるが、企業の海外展開というやっかいな問題がある。

 番組は機械化と資本主義に関する古典的な議論の再編ともいえる。付加価値の拡大にともなう分配をどうシステム化していくのか。資本家的な立場では、生産性の上昇、収益の拡大、それを可能にする税制優遇が前提だと理解する。他方で、労働者の立場では、賃金抑制では、生活基盤がなりたたない。経済の基盤は消費の底上げなので、最低生活保障の基盤は必要ということになる。

 司会の爆笑問題の太田氏が、「成功者の意見」として、孫氏をたびたびつっこむ姿が面白い。また、新井氏が「孫さんは法人税の引き上げには賛成なのか」とたずねたのにたいし、孫氏は「法人税そのものは必要、ただし、その水準は議論の余地ある」とこたえるシーンがある。孫氏は法人税そのものは否定せず、その水準の問題に絞っている。機械化と資本主義をテーマに掲げるこの番組を象徴するシーンだといえる。

 全体として、授業などでも使えそうなわかりやすい解説と、テンポよい会話が魅力的な番組である。

 

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