政治経済学と労働価値説

 黒瀬一弘(2017)「経済学の多様性と『資本論』」『日本の科学者』52(9)をざっと読んだ。標準的な経済学とは異なる経済学の多様性を主張する。全体の論旨には賛同するが、労働価値説は、政治経済学が継承するものではないと主張する。その点についてはどうなのかと疑問に感じた。新古典派経済学が市場への参加者を対等・平等とみて階級関係を事実上軽視している。あるいは前提としていないと把握するのであれば、政治経済学的なビジョンには階級関係に基づく搾取があるはず。多様性はいいのだが、外してはいけない論点があるように思える。
 経済学の参照基準について、新聞経済学ではいけない。体系性を持たないといけないとする主張も広くみられる。たしかに経済学の理論体系としては正当だとしても、教育現場で活用するときはどうなのか。骨格となる概念をもとに現実を分析するほうが妥当ではないかと感じた。理論と応用の違いでもあるが。