高校生向けの出前講義

 高校生向けの出前講義。大学ではなく、出先の高校で授業を行う。最近の高校では、2年生が進路選択の機会として、様々な大学の教員の授業を受ける。そのような位置づけになっているようだ。オープンキャンパスで行う模擬講義と違って、高校の教室で授業を行う。大学の場合、100〜200人程度の大教室で、プロジェクターに投影する形で講義を進めることが多いが、出前講義では30人前後の教室で講義を行う。机や椅子は、一人ひとりに与えられるあの懐かしい教室である。時間は通常50〜60分前後である。2コマ連続で講義することもある。このような形式の出前講義。事前に高校生が準備していることは少なく、教科書もない。したがって、その日準備する資料だけで中身を理解をしてもらうことになる。
 高校生の授業はいまでも黒板で板書する方式が多いのだろうか。そのあたりの事情は十分に把握していない。ただし、自分の講義では、レジュメと映像、板書を組み合わせている。形式的にもパワーポイントを用いた学会発表風の内容が求められるのか、それとも古典的な板書を使った方式が望ましいのか。そのあたりの状況を理解し損ねている。これまでの感覚から、後者のほうが高校生にマッチしているように思える。
 出前講義の目的はどこにあるのか。高校生に対していままでにない新しい視点を付与することが目的なのか。そうであったとしても、普段の授業とは違う、教科書から離れた話を50分聞くのはしんどいはずだ。もちろん、わざわざ大学の教員が来ているので、皆さん真剣に聞いているのだが、お互いのニーズの不一致が見られるように思える。せっかくの機会なので、有意義な時間にしたいと思っているが、やり方がうまくいかないこともあって、終わったあとに徒労感が伴うことが多い。その点、手間がかかるけれど、高校生には普段の授業を大学生と一緒に受ける1日体験授業のようなものをお勧めしたい。オープンキャンパスのような、事実上の宣伝のための内容とも異なり、実体としての授業の感覚が分かる。