調査アポイントメント/電話

 調査のアポイントメントはいつも緊張する。特にてきぱきしている人事担当者の方がいる会社だと「おお!きた」とどきどきする。社会性のない人間が、社会性のある方々へ連絡をすることになるので、いつも不安になる。逆に零細企業の場合、ふつうのおじちゃん、おばちゃん的な感じが多いので、「大学の先生…?!」とむこうが引いてしまうこと多い。
 現在はほとんどの連絡をメールでやり取りすることが多い。けれども調査やその他の連絡の基本は対面だし、電話でやり取りする。電話を通じて相手の雰囲気も分かるし、「嫌がっているのか」「好感を持っているのか」、その辺の雰囲気もなんとなく分かる。あくまで「なんとなく」だけれど、メールでこのあたりを理解するのはもっと難しい。だから、一部の例外を除いて、基本的にメールでは議論をしたりしないほうがいい。文章だけで文脈を理解するのは困難だし、その文章を書くこと字体に多くの時間がとられる。場合によっては人間関係も悪化する。電話であれば、そのあたりの制約はあまりない。
 電話の場合、携帯電話よりも固定電話、職場電話を好む。携帯電話だと履歴が残るので、「返信をしなければ」という無言のプレッシャーを与えうる。固定電話の場合はそうした感じがない。とはいえ、電話をすることは「相手が忙しいのではないか」という憶測もあって、なかなか積極的にはできない。自分が受ける場合にも外部からの宣伝、広告で電話がかかってくると「電話はめんどくさい」と思うことがよくある。ただし、事前の人間関係が構築されていればいるほど、「電話のほうが楽」という側面もある。それだけ言語のコミュニケーションは素晴らしい。
 科研費などの自分の調査の場合、例外的に公的機関の方にアテンドしてもらう場合もあるが、ほぼ100%自分で調査先に連絡をする。ただ、先日学内業務で事務局のスタッフが調整をとってくれるケースがあった。これは本当に楽だった。日程を申し出て、先方とは調整してもらう。あとは当日までに質問項目を送る。秘書等がいる研究者(いるのか?)の場合にはこうした調整もしてくれるのだろう。要するに、調査設計、アポ、日程調整などは想像以上に労力がかかる。
 調査をする場合には地元大学特有の強みと弱みがある。強みは相互規定的なこと。就職先や学生との交流等でお世話になるから、受入企業や行政にとっても調査等で簡単に断ることは難しい。これは調査にとってはプラスである。他方、弱みは利害関係に規定されること。地域の政治家も含めて、当該地域はあらゆる利害関係で動いている。だから行政の主流派に批判的なことはやりづらい。調査先地域の大学に知り合いの教員がいるととても動きやすい。自分は利害関係者ではないので、地域の利害関係から生ずる各種の制約に対して、相対的に程度フリーな立場で調査できる。地元の知り合いの教員がいるので、先方が心を開いてくれる場合が多い。